2021.01.04
多種多様で自由な遊びを提供する、インクルーシブ・プレイグラウンド「キッズパーク」
theGreenに足を踏み入れると、有機的な曲線を描く遊具が印象的な「キッズパーク」が目に入ります。アートオブジェのようなプレイグラウンドでどんなことができるのか。「キッズパーク」を設計いただいた、遊び場と遊具の国際規格EN1176で唯一指定されているRPII* の精密点検技師の資格を保持する株式会社アネビー開発部部長の弘永さんと、同社安全管理部の稲葉さんにお話を伺いました。
*RPII:Resister of Play Inspectors International
スタートもゴールもない。自由に遊び、成長につながるプレイグラウンド。
—とてもユニークなデザインですね。あまり見かけたことがないのですが、なぜこのようなデザインなのですか?
豊かな植栽に囲まれたtheGreenの雰囲気に溶け込むよう、自然界にあるような有機的なフォルムを取り入れました。またこのデザインは子どもたちの発達に重要な前庭覚(ぜんていかく)を獲得するように設計しています。前庭覚は自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚で、さまざまな動作とスキルの基本となります。子どもが小さいうちから意識して獲得しておくことで子どもたちの健やかな成長につながるんですよ。
—なるほど。どのように遊んだらよいのでしょうか?
あえて決められた遊び方を設けていないのですが、いろいろなところに遊びのポイントがあり、ライトからヘビーまで段階的に前庭覚を獲得する動きを体験してもらえるように設計しています。スタート地点もゴールもないので、どこからでも遊び始めてもかまいません。そのことで想像力が刺激されるのです。遊び方を言わなくても、子どもたちはすぐにいろんな遊び方を始めますよ。本当に子どもたちは遊びの天才ですね。
登ったり、滑ったり、転がったり。安全性を重要視し、楽しく遊べる場所を。
—自由な遊び方に好奇心や想像力が刺激されそうです。この中で前庭覚をどのように獲得するのでしょうか?
この「キッズパーク」には14箇所の遊びのポイントがあります。今回は代表的なポイントをご紹介しますね。3つある滑り台のうちのひとつ「スライドスロープ」は、上から滑ってもいいですし、下から登ってもかまいません。全体が揺れるように設計されていて、日常では得ることのできないバランス感覚を刺激され、公園にあるような滑り台とはまた違った体験ができます。DNAの二重らせん構造のようなデザインの「DNAネット」は、バランスを取りながら進んでいくことで前庭覚が刺激されます。実は登っているうちに身体が逆の方向になってしまうので、「いつ向きを直すか」と考えないといけません。日常生活にはあまりない判断力が発揮されます。
—遊びの中で生まれる自然な動作の中で、さまざまな感覚を得ることができるよう設計されているのですね。
はい、その通りです。決められた遊びのルールがないからこそ、前庭覚はもちろんそのほかの感覚も養われていくんです。それから、このような自由な遊びを楽しんでもらうには ”安全であること” も同時に重要視しなくてはなりません。わたしたちアネビー社は、スウェーデンで約70年の歴史をもつヨーロッパ最大のプレイグラウンドのメーカーであるHAGS社の製品を導入しています。プレイグラウンドの設計にあたっては、HAGS社が掲げる「子どもたちが安全に、かつ楽しく遊べるものはどういうものなのか」を追求したプロダクトポリシーと、ヨーロッパで採用されているプレイグラウンドの安全基準EN1176に基づき、なによりも安全性を重視しています。それから、アネビー社では、EN1176を策定しているCEN委員会が認定する、遊び場設計・点検・リスクアセスメントの検査機関「RPII」によるトレーニング、試験などを受け、精密点検検査技師を取得した者を中心に安全管理に努めていて、わたしもその一人です。リスクをマネジメントし、世界水準の安全な遊び場を提供しながらも、ベネフィット(遊びの価値)を失わないことがとても大切なのですよ。
あらゆる人が楽しめるインクルーシブ・デザインを。
—このプレイグラウンドはインクルーシブ・デザインを取り入れているのとのことですが、どのようなものなのでしょうか?
近年、あらゆる人が楽しめることを理想としたインクルーシブ・デザインが世界的にも注目されています。この「キッズパーク」のプレイグラウンドも、インクルーシブ・デザインの概念を基に、多種多様な楽しさを感じることができる場所となるよう設計しており、子どもはもちろんのこと、あらゆる人が楽しめるということを目指しています。
—どんな人でも楽しく遊ぶことができるよう考えられた「キッズパーク」。ぜひたくさんの方に利用していただきたいですね。
theGreenの「キッズパーク」の周辺にはベーカリー、カフェ、雑貨などのお店もあるので、大人と子どもたちが同じ空間で有意義な時間を過ごすことができます。大人は子どもを見守りながらコーヒーを楽しみ、子どもは「キッズパーク」で夢中で遊び、みんなでベーカリーの美味しいパンを食べる、こんな場所は他になかなかないと思います。これからもたくさんの人たちに自由な遊びの楽しさを体感してもらえる場所になって欲しいと思います。
キッズパーク
theGreen 内
開閉時間:常時開放(夜間は周囲が見えにくくなるため、日中のご利用を推奨いたします)
設計:株式会社アネビー
https://www.aneby.co.jp/
Text&Photo:theGreen運営事務局